簡易・略式手続による吸収分割 -- 吸収分割(4) -- 
会社の吸収分割は、一定の要件を満たしたときは、株主総会の承認を必要としない場合があり、迅速な組織再編が可能な反面、株主に対して本来あるべき承認・反対の機会を奪うともいえることから、会社法において規定が設けられています。
しかし、その多くは旧商法のときよりも緩和されているものが大半です。
吸収分割の手続
- 会社の吸収分割の概要
- 吸収分割契約書に関する事項
- 各当事者への保護手続
- 簡易・略式手続による吸収分割
簡易分割の要件 -- 承継会社
分割承継する株式会社においては、分割承継に際して交付する株式その他の財産の合計額が、承継株式会社の純資産額の5分の1を超えない場合です。

なお、5分の1の基準は会社が定款においてこれを下回る割合を定めることができ、その場合は定款の定めに従います。
また、上記の要件を満たしても簡易手続が出来ない例があります。
簡易分割の要件 -- 分割会社
分割会社においては、承継させる財産の帳簿価格の合計が総資産額の5分の1を超えない場合です。
ここで注意が必要なのは、承継会社においては純資産額、分割会社においては総資産額がその対象になっていることです。
また、承継会社の場合と違い、分割会社においては例外の規定はなく、上記要件を満たせば株主の利益を害することは考えられないとされているため、反対の意思表示の機会も株式買取請求権も与えられることがありません。
簡易手続の例外 -- 承継会社
承継会社において、上記要件を満たしていても、次の場合には簡易手続によることはできません。
- 承継資産を上回る承継債務があるとき
- 分割会社への交付株式が譲渡制限株式で、承継会社が非公開会社のとき
- 法務省令(会社法施行規則197条)で定める一定の株式を有する株主の反対が公告・通知の日から2週間以内にあったとき
規197条1項
【特定株式 議決権行使可能株式数】 × 【1/2 特別決議の際の出席株主の議決件数・定款で別段の規定可能】 × 【1/3 1−2/3(特別決議の賛成可決数・定款で別段の規定可能)】 + 1
例)
議決権行使可能株式数 1,000株
特別決議に必要な出席株主の有する議決権数 1/3
可決に必要な議決権数 2/3 としたとき、
1,000株 × 1/3 × (1-2/3)+1 = 112.11…
となるので112株を有する株主の反対がある場合は、
簡易手続によることができない。
→ 株主総会の特別決議が必要
略式吸収分割
A株式会社がB株式会社の株式の9割以上を保有している場合は、そのA社はB社の「特別支配会社」と定義され、B社を「被支配会社」とする。
特別支配会社と被支配会社の間で組織再編行為を行うときは、原則的に被支配会社の株主総会決議は不要とされた。
被支配会社の株式の9割以上を特別支配会社が占めているということは、株主総会の特別決議による承認を得られるのは明らかなので、開催の必要そのものがないためです。
※ 特別決議をする際の株主総会の出席株主数は定款の規定をもってしても3分の1を下回ることができないため、9割を占めた特別支配会社が出席しない場合は決議そのものができないからです。